「第15回アジア 女性会議―北九州」(テーマ:人間の安全保障とジェンダー)

2004/11/06

上智大学教授・前軍縮会議日本政府代表部大使 猪口邦子

 

ジェンダーと人間の安全保障――軍縮外交の現場から

 

20世紀の戦争においては非武装市民の戦死が兵士の戦死を上回るという点において衝撃的であったが、21世紀においては戦争関連死の過半数が女性と子供なりつつある。21世紀の戦争の特徴は根の深い紛争(Deep-rooted Conflict)の側面にあり、また冷戦後の世界においては小型武器などの非合法拡散が紛争後も進み、女性や子供など無防備な人々がその犠牲となりやすい状態が続いてきた。

この問題に対処するために国連における通常兵器の非合法拡散阻止を実施するプロセスを立ち上げることを軍縮大使として志し、国連におけるその目的のための初めての国連会合が20037月に開催された際には議長を務め、小型武器軍縮の手法と優先的措置を詳述した議長総括付きの報告書を加盟国の全会一致で採択することができた。その検討過程においては女性が武器供出の担い手になるなど、ジェンダーをこえた小型武器軍縮への参画が見られることがわかり、小型武器軍縮に協力したコミュニティーには、子供病院や学校を与えるなど、小型武器の最大犠牲層を裨益者とするインセンティヴ構造が効果があることや、社会の各層が総合的にオーナーシップを感じることのできる参加型の軍縮プロジェクトが成功しやすいことが注目された。

対人地雷の除去も人間の安全保障の本質に関わる。対人地雷の犠牲者の過半数は6歳から12歳の山野をかけめぐる好奇心に富んだ年齢層の子供である。被害者の世話を末永くする役割が女性に集中するという点においてもジェンダーの問題と深く関わる。

核軍縮についは、その被害は無差別であるという点において女性も被害者であり、軍拡予算が社会開発の予算をクラウドアウトするという点からもジェンダーの観点からも認識を深めなければならない問題である。

根の深い紛争の解決には、和平協定のみでなく、和解のプロセスを構築していくことが必要であるが、女性の参画の重要性の認識の下に包含性のある和解プロセスを構築するという平和へのパラダイムを示していくことは、今日の戦争と平和の最前線の重要課題の一つである。(了)