[戻る]


上智大学通信第302号掲載

「グローバリゼーションと貿易」 パスカル・ラミー欧州委員の講演



 日・EU定期首脳協議に出席するために来日した欧州委員会パスカル・ラミー通商担当委員が、六月二十二日本学を訪問し、「グローバリゼーションと貿易―いかにして開発の余地を確保するか」と題して講演を行った。法学部国際関係法学科猪口邦子教授の「国際政治学」の講義時間を利用して開催された講演会には、学内のみならず、在京大使を含め学外からも多数の学生や職業人が来場し、グローバリゼーションの光と影をめぐって積極的な質疑応答が繰り広げられた。
 九九年九月より欧州委員会委員として活躍しているラミー氏は、グローバル化時代の貿易と開発について、EUの取り組みを豊富な具体例を交えて語り、「WTOという組織、そして多角的な貿易交渉は、強者が弱者を切り捨てることのないように、途上国の中でも貧しい国々の利害に焦点を合わせる必要がある」と主張。貿易交渉の詳細に踏み込んだ説明に、学生たちは熱心に聞き入っていた。
 講演の最後には質疑応答の時間が設けられ、「多国間交渉において各国代表との交渉以外に、NGOとどう対応しているか」「先進国と開発途上国の現状認識や意見の隔たりについてどう考えているか」「ラミー氏の考える理想的なWTOとは?」などの質問ひとつひとつにラミー氏は丁寧に答えた。最後に、日本に対して求めるものを問われ、ラミー氏は「市場開放は、特に農産物に関しては非常にセンシティブな問題をはらんでいるが、途上国の生活水準を向上させ、世界的な貧困を削減するために日本にも努力していただきたい」と提言し、約一時間の講演が終了した。
 猪口教授は「世界の貿易交渉の重鎮であるパスカル・ラミー欧州委員会委員が訪日の際、日本の若い世代と語る場を求め、本学で講演したことは、上智大学が国際社会のなかでアジアの知的発信の場として高く認識されていること示している。学生たちは、国際舞台の交渉者の直接の話に啓発されたようであり、またラミー委員も大学における講演らしく、交渉の背後にある思想的立場を伝えようと努力し、有意義で深まりのある議論が展開された」と語った。
 学生の一人は「優れた交渉官であるための条件のひとつは、哲学の徒でもあるということを知った」と感想を語った。