Sophia University Faculty of Law 2000.6.15. International Politics
Collective Security and UN Peace-keeping 集団安全保障
1)集団安全保障の理念的背景
1. 正戦論と無差別戦争論
2. 第一次大戦と国際連盟の成立:集団安全保障にみる正戦論の復活 ーーー経済制裁中心主義と米国の国力の構造
3. ロカルノ条約とケッログーブリアン協定
2) 国連と集団的強制措置
1. 憲章7章型国連軍
2. 目的及び活動内容
(1)国連平和維持活動(Peacekeeping Operations:略称PKO)とは、伝統的には、安保理(又 は総会)の決議に基づき、国連が停戦合意の成立後、紛争当事者の同意を得て、加盟国から 提供される要員を現地に派遣し、紛争当事者間に介在して、停戦や軍の撤退の監視等を行う ことにより、事態の沈静化や紛争の再発防止に当たるものである。基本的に、非強制的な性 格の活動であり、武器の使用は自衛の場合のみに限られている。
(2)冷戦の終結以降、紛争解決における国連の役割が見直されると共に、国内紛争への対 応としてPKOが展開するケースが増加した。そこでは、軍事要員の活動に加え、選挙、文民警 察、人権、難民帰還等の人道支援から、行政事務や復興開発まで多岐にわたる分野での活 動が求められており、これに伴い、警察官や政務官などの文民の果たす役割が増大してい る。また、紛争の発生を未然に防止することを任務とするPKOも設立された。
(3)その一方、国家間の停戦合意の監視等を任務とした、いわゆる伝統的なPKOも引き続き 重要な役割を果たしている。
2.憲章の根拠 国連平和維持活動は、戦後の東西対立の中で、国連憲章第7章に定める集団安全保障制 度が機能しないことから、国連が世界各地の紛争地域の平和の維持または回復をはかる手 段として実際の慣行を通じて行われてきたものであり、第2代国連事務総長ダグ・ハマーショ ルドが「憲章6章半」の措置と呼んだとおり、国連憲章上明文の規定はない。
3.国連平和維持活動の構成
(1)国連資料によれば、「伝統的な」国連平和維持活動は大きく分けると、原則として非武装の将校からなる軍事監視団(Military Observer Mission)と、歩兵部隊を中心に必要な後方支援要員を擁する平和維持隊(Peacekeeping Force、PKF)による活動に区分された。現在活動中のPKOの中から、前者の例としては国連休戦監視機構(UNTSO)や国連インド・パキスタン軍事監視団(UNMOGIP)が、後者の例としては国連兵力引き離し監視隊(UNDOF)や国連レ バノン暫定隊(UNIFIL)があげられる。しかし、国連イラク・クウェイト監視団(UNIKOM)のように軍事監視要員と歩兵部隊の双方を持つものも存在する。
(2)更に、上述のように、近年設立されたPKOのなかには、軍事部門以外にも種々の文民部
門を含むものが多い。(例えば、我が国が参加した国連カンボディア暫定機構(UNTAC)では、
軍事部門に加え、文民警察、行政、選挙、復旧、人権及び難民帰還部門から構成された。)
そのようなPKOにおいては、文民部門の活動が軍事部門に劣らず重要であり、「伝統的」な軍事監視団
かPKFかという区別はあまり意味を持たない。
(3)Agenda for Peace ブトロス=ガーリ前国連事務総長が「平和のための課題」
で「平和執行部隊」を提唱。平和維持隊はあくまで通常のPKOの一環として、武器の使用は自衛の場合のみに限定されているが、「平和執行部隊」は、憲章第7章(「平和に対する脅威、平和の破壊及び侵略行為に関する行動」)に基づく強制活動であり、武器 の使用も自衛に限定されない。UNISOMII
4.最近の状況と課題
(1)上述のように、冷戦の終結後、国際の平和と安全の維持の分野における国連の役割
が高まり、PKOがそれまでになく多数設立されるようになった(1948年以降、今日まで合計53件のPKOが
設立されているが、そのうち40件が冷戦終結直前期(1988年)以降に設立)。
2000年4月1日現在、15のPKOが展開中。要員数については、3月1日時点では、約80か国からおよそ
26000人の軍事・警察要員が派遣されている。
(2)99年は、国連コソヴォ暫定行政ミッション(UNMIK)や国連東チモール暫定行政機構
(UNTAET)といった大型かつ多機能なPKOの設立が相次いだ。両PKOとも、行政を国連が直接担当する画期的
なPKOである。国連は、UNMIKにおいては、NATO、OSCE及びEUと協力して活動を行っており、UNTAETでも、
UNHCR、UNDP、世銀やIMF等と密接に協力するなど、地域的機関、人道支援機関、開発援助機関等との協力により成果を上げてきている。
(3)また、ルワンダにおいてPKOの迅速な展開が出来なかったことなどの反省から、国連の緊急対応能力向上の必要性が認識されており、国連の緊急展開能力を如何に充実させるかについて、引き続き議論が行われている。また、大型PKOの相次ぐ設立に伴い、軍事要員や文民警察要員のみならず、行政官や種々の専門家を如何に確保するかも課題となっている。
(4)アナン事務総長は、2000年3月、PKOを含む国連の平和活動に関するあらゆる問題をレ ビューするために国際的な有識者によるパネルを設置した。同パネルは、同年9月に予定されている国連ミレニアムサミットに間に合うよう報告書を提出する予定である。