過去2年間の(2002年4月〜2003年4月)の軍縮代表部の活動
平成16年4月2日
軍縮会議日本政府代表部
外務省 軍備管理・軍縮課
1.軍縮会議
日本は03年8月から年末まで軍縮会議の議長国を務めた。軍縮会議は97年以来作業計画に合意できず、軍縮条約交渉ができない状況にあるが、軍代大使としては次代の核軍縮条約となる兵器用核分裂性物質生産禁止条約(カットオフ条約)が最重要事項であるとの認識の下、その交渉開始に向けて全会一致の合意を形成すべく、米中等核兵器国に強い働きかけを行い、またカットオフ条約に関する作業文書を軍縮会議に提出し、検証ワークショップも開催し、交渉開始への政治的モメンタムを生み出すよう努力した。現在はカットオフ条約交渉開始に関する米政府の戦略的検討結果を待っている状況となっているが、昨年9月の実質的会期末において日本議長に2003年の閉会期間も協議を続行して結果につき報告する特別マンデートが加盟国全会一致にて付与されたため、軍代大使は閉会期間に行った種々の協議を踏まえた上で、12月に全加盟国対象の非公式協議を召集し、カットオフ条約交渉早期開始を含む作業計画に関する議長提案を発表した。その後、本年の軍縮会議において、日本議長作成の議長提案をベースに作業計画を作成すべきとの声が強まり、各国の要請を受けて、軍代大使は3月25日の本会議での自らの離任演説においてその公式文書化を認めた。
03年9月には日本議長下において、川口外務大臣の軍縮会議ご出席を得ることができ、カットオフ条約早期開始要請を含む日本の包括的な軍縮政策に関する演説が行われた。日本の外務大臣の軍縮会議演説は、91年の中山大臣以来であった。また、軍代大使は軍縮会議議長として国連総会に提出するための軍縮会議報告書を起草し、かつ例年にはない交渉開始への実質事項を含む報告案への全加盟国の賛意を取り付け、その内容を反映した総会決議を起草して全会一致採択を実現した。
2.核軍縮・不拡散
常設の国際機関を有しない核兵器不拡散条約(NPT)にとり、5年毎に開催される運用検討会議とその準備プロセスは、核軍縮、核不拡散、原子力の平和利用につき、条約の運用状況を検討・評価する唯一の貴重な機会である。03年に開催された第2回準備委員会は北朝鮮のNPT不遵守とNPTからの脱退宣言、イランによる原子力活動に係る懸念等の厳しい環境の中で開催された。軍代大使は特に北朝鮮問題の取り扱いについて、米、韓、議長と緊密に協議を行い、全会一致で採択された報告書に添付された議長サマリーにおいて我が国の考え方を反映させることに成功した。
国連総会では、我が国は1994年以来核廃絶決議を継続して提出しているが、一昨年は露の賛成票を得ることができ、更に昨年は過去最高支持票数(賛成164、反対2、棄権14。核兵器国としては英仏露は賛成、米は反対、中は棄権。)で採択された。
3.生物兵器
生物兵器禁止条約(BWC)は長年検証議定書策定交渉が続けられていたが、米国の同意が得られないまま2001年の第5回運用検討会議は一年間のサスペンド状態に入った。2002年5月に着任した軍代大使は直ちに議長や米当局と鋭意協議を重ね、02年11月に開催された右運用検討会議再開会合においては、再度の決裂寸前に日本軍代大使公邸を舞台に日本の仲介による非公式協議が米と非同盟系諸国の間で執り行われ、新たな条約強化プロセスの立ち上げが全会一致で実現する運びとなった。条約の国内実施措置、バイオセキュリティ、危機対処等に関する高度かつ広範な情報交換と国内措置強化支援策等を中核とする専門家会合及び締約国年次会合からなるそのプロセスは新たな条約強化方式としての評価を得つつある。日本は作業文書の提出等積極的な貢献を心がけてきた。
4.小型武器
03年7月、ニューヨークにて軍代大使が議長を務めた第1回国連小型武器中間会合が開催された。軍代大使は議長総括を含む報告書を起草し、その全会一致採択を実現して、今後の取組みへの政治的モメンタムをもたらした。多国間主義強化の方針によって通常兵器軍縮のプロセスへの各国のオーナーシップを引き出し得たことは、数ヶ月後の国連総会第一委員会(軍縮・安全保障)での各国政府演説に小型武器軍縮への取組みや右国連会合への言及が相当な頻度でなされことからも伺われる。これに先立ち、6月初旬のエビアン・G8サミットでは初めて小型武器問題が取り上げられ、右国連会合を歓迎する旨の言及がG8サミット議長総括でなされた。さらに同年の国連総会において、我が国は南ア、コロンビアとともに小型武器の非合法取引に関する総会決議を起草し、全会一致採択を実現した。その結果、本年から小型武器のトレーシングに関する作業部会での交渉が開始されることとなった。
5.地雷・不発弾等
対人地雷禁止条約(オタワ条約)においては、軍代大使は02年から地雷除去等常設委員会の共同報告者に就任し、03年には、バンコクでの第5回締約国会議で右常設委員会の共同議長となった。現在、日本は本年11月ナイロビで開催予定のオタワ条約第1回運用検討会議に向けて、会期間活動を実施中である。
特定通常兵器使用禁止制限条約(CCW)では、ジュネーブでの数次にわたる専門家会合を経て02年末の締約国会合において、爆発性戦争残存物(いわゆる不発弾等)の規制に関する議定書交渉が妥結し、不発弾の人道的危険を緩和するため国際社会の取り組みを強化する上で有意義な議定書がCCW第5議定書として採択された。軍代大使としては、第2次世界大戦で中国等に残した不発弾と関係がある規定については、使用・遺棄国の責任・義務を規定することなく、国際社会全体による一般的協力を規定するに留めるための交渉を結実させた。(了)